素晴らしい能楽堂で、コンテンポラリーダンスと歌と狂言のコラボレーションを見た。

個人的な見解なため、以下の感想には偏見もあると思って読んでほしい。

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演劇をはじめとする表現活動には、空間というものが強く作用する。

そのため、どんな表現方法でも、場所選びには重々気を付けていないと、その表現の良さが発揮できないこともある。

私は神楽がもっとも身近にあった芸能だったため、神楽をたとえに出すと、通常は神社で奉納神楽として舞うことが多い神楽だが、一般的なステージなどでお客さん相手に舞うこともある。

その時、まったく同じ演目、演者でも、神社で舞っていた時のような異様な緊張感や神聖な空気が抜けているように観えるのは、空間の違いが強く作用しているということが、観たことのある方ならお分かりいただけるだろう。

本日見た公演では、ほんどのグループが能舞台という空間の力強さに負けているのを、感じずにはいられなかった。

この能舞台ではなく、森の中の森林劇場ならこのパフォーマンスは生きるな、この表現はブラックボックスでやればもっと面白く感じられるはずだ、などと観劇の間考えてしまった。

もちろん身体の技術やダンスは、私が到底口を出せないほど高度で、しなやかな動きをしていた。それだからこそ、もったいないなと感じてしまった。

場所を大切にしている意識はもちろんあったのだろう(開演前にもそういう説明があった)。能舞台の床全体には赤いパンチカーペットを敷き、肌が直接床につくのを防いでいたり、柱には触れないようにするなど、能舞台での決まり事を守っていた。

確かに場所を大切に使用しているのだが、この場所を「尊重」しうまく「共存」した作品、というのは少なかったように思う。表現者と場所の「分離」が私には見えて、とても悲しかった。

表現者も場所も素晴らしいからこそ、残念だった。

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しかし、その中でも違ったのは「ZA人間国宝」だった。

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歌自体の質や声質、ダンスの質、衣装、構成、すべてが上手く能舞台の空間と共存していて、今回のコラボレーションでは、一番良かったのではないかと思った。

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春木真里奈の独特な声質とギターの音色が能舞台に広がる中で、谷口絵理香の小さくしなやかな体から表現されるダンス、そしてなによりそのストーリーの構成が見事であった。
もう少し出番の時間が長くても良いと感じるくらいに、彼女達の初お披露目だった今回の企画は、これからの活躍に大いに期待できる素晴らしいパフォーマンスだった。

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(写真提供、ZA人間国宝関係者)

そして、もう一つの私のお気に入りは、狐の面を被り、着物に袴姿のコンテンポラリーダンスをした浜田麗子氏の「きのっこ、足袋のち跳ね」。これが面白かった。この方も上手く能舞台の空間を無視しない素晴らしいパフォーマンスをしていたように思う。

 

いろいろと勝手なことを書いてしまったが、もしもお心に触った方がおられたら、若造の戯言だと思って許してほしい。

今回のこの企画の取り組みは、新たな発見も沢山あり非常に面白かった。この企画を実行するには大変な苦労もあるのだろうとも感じた。能楽堂と狂言とコンテンポラリーダンスの共演はなかなか見られるものではない。私もコンテンポラリーダンスを能舞台で見たのは初めてで、とても良い取り組みだと思った。これからも是非続けて行ってほしいと願っている。私は次回も見に行くつもりだ。